[研究レポート No.232]
*Fujitsu Research Institute (FRI) ; 富士通総研·経済研究所---要 旨----
1. 中国企業の対外投資は、近年、急増している。投資はおもにアジアの周辺諸国に集中するが、中南米、欧米、アフリカなど全世界に及んでいる。投資の対象分野は、おもに通信と情報機器などのIT産業、販売拡大につながる貿易・卸売・小売などの産業、資源開発の3分野に集中している。投資方法についてはM&Aと利益再投資が急増している。対外投資が行う中国企業のなかで、大手国有企業がとくに注目される。
2. 中国企業の対外投資はなぜ急増しているのか。まず、中国経済の高成長が、企業の対外投資を促進している。次に、政府は経済摩擦の回避、資源の獲得、グローバル企業の育成などを目的に、企業の対外投資を奨励し、サポートしている。さらに、企業側の要因としては、グローバル経営の一環として、サバイバルと発展を図り、海外市場と技術を獲得するため、積極的に対外投資を展開している。
3. 中国企業の対外投資戦略は、独自の多国籍企業化戦略、グローバル発展戦略と関連する。さまざまなアンケート調査で、対外投資の目的、投資の手段、対象分野と投資地域など、その投資戦略を確認できる。
4. 中国企業の対外投資は、政府の奨励とサポート、低コストでの大量生産など、中国企業が持つ優位性がその背景にある。一方、制度上の制約、投資対象国の事情への理解、海外企業の経営は課題である。企業買収の場合、黒字転換と企業文化の調和と統合が重要である。今後、中国経済の発展、企業の実力増大に伴って、中国企業の対外投資がさらに拡大していくであろう。
5. 中国企業の対外投資は日本にも影響を及ぼす。中国企業の対日投資はまだ少ないが、最近、日本での企業買収の事例も増えている。一部の地方自治体は中国企業の対日投資を積極的に誘致している。