[Weekly「エコノミスト・レター」2005/08/19号]
*NLI Research Institute : ニッセイ基礎研究所<要 旨>
今年上半期の中国の貿易黒字急増は、国内投資の減速、生産能力の増強、多国間繊維協定の完全撤廃などで機械機器と金属製品の収支が黒字転化し、労働集約的製品の黒字が拡大したことによる。下半期は在庫調整進展、輸出数量規制、人民元切り上げなどの影響が加わるが、黒字減少は小幅に留まり、米国からの人民元切り上げ要求は続くだろう。
高水準の貿易黒字、直接投資の流入に加え、追加切り上げ期待からくる資本流入も続くことで、外貨準備高がさらに積み上がる可能性も高い。政策当局は、為替相場の安定と金融政策の独立性確保のジレンマにも悩まされ続けるだろう。
中国は7月21日の為替相場制度改革後、為替リスクヘッジ手段の拡充、市場における相場形成メカニズム改善措置を打ち出すことで、改革に継続的に取り組む姿勢を示しているが、これだけでは米国の不満と投機的な資本流入の圧力を緩和することは容易ではないと思われる。