[Vol.40-1(17-4-1)]
*Shinkin Central Bank Research Institute; 信金中金総合研究所(はじめに)
上海市の西北部に位置する嘉定区は古くから上海の衛星都市として栄えています。1985年3月に地元自動車メーカーの上海汽車グループとドイツ・フォルクスワーゲン社の合弁自動車会社「上海大衆汽車有限公司」が設立されて以来、中国華東地域の自動車産業基地として順調に発展してきました。2004年秋には区内の上海国際汽車城にてF1が開催され、世界中から注目を集めています。本中金上海駐在員事務所では2004年12月から2005年4月にかけて嘉定区を調査しましたので、その結果をVol.40-1「上海市嘉定区の現況」(本稿)、Vol.40-2「上海市嘉定区の自動車産業」として報告します。 1.嘉定区は上海市内の北西部に広がる行政区画の一つで、北側・西側は江蘇省太倉市、昆山市、東側は上海市宝山区、南側は青浦区、閔行区と境を接している。嘉定区の中心部から上海張華浜国際コンテナ埠頭まで約25km、自動車で25分程度、浦東国際空港まで約75km、75分程度である。また嘉定区内には華東地域最大の貨物運送駅である南翔駅がある。 2.2004年の嘉定区の経済は工業生産の増加、内需拡大、好調な輸出などに支えられてGDPは前年比21.0%増と上海市全体の増加率13.6%を上回る高い成長を遂げた。 3.嘉定区では、1986年に上海大衆汽車有限公司が安亭鎮で生産を開始して以来、1992年に市級開発区である嘉定工業区が設置され、さらに2001年には安亭鎮に上海国際汽車城が設置される等、自動車関連産業を中心に外資系企業が進出し、投資契約額、輸出額は増加傾向にある。その結果、2003年までの外資投資累計額(契約ベース)は約100億米ドル、投資件数は約2,400件となっている。2004年の外資導入実績は主に製造業の投資が貢献し、投資額は契約ベースで前年比30.6%増加の2,730百万米ドルとなった。新規投資のうち総投資額10百万米ドル以上の案件は、2003年に35件、2004年は70件あり、近年は比較的大型の投資案件が増加している。 4.2003年から顕在化した電力不足問題は、嘉定区内の外資系企業も夏季・冬季に休日シフトを迫られる等の影響があったが、生産に大きな支障を来たすには至らなかった。今年は6月15日から9月23日が需要ピーク期間とされ、昨年同様の節電対策が採られている。なお、上海市政府によれば今年後半から新たに建設した発電所の稼働開始により発電能力が増加し、来年には基本的に需給バランスは保たれるとのことである。 5.嘉定区は上海市内にあり交通アクセス等の投資環境に優れながらも、進出コストが比較的安価であり、投資進出地として総合的なバランスの取れた地域である。また、中小企業の進出を歓迎しており、これから進出を検討する企業、特に自動車関連企業にとり、進出候補地と成り得る場所である。