[内外経済・金融動向 No.17-5]
*원제명 : ~今後の人民元改革のシナリオと日本経済・産業界への影響-年内にも人民元は再切上げ、産業界は対中戦略の見直しが課題に1.人民元改革の評価と見通し~年内にも再切上げの可能性
7月21 日、中国政府は人民元改革に踏み切った。人民元の対ドル相場は約2%切り上げられ、
同時に、事実上の対ドル固定相場制は放棄された。人民元相場は、通貨バスケットの動きと市場
の需給動向によって決定されることになったが、これまでのところ、人民元相場は極めて狭いレ
ンジでの取引が続いており、通貨バスケットの動きをほとんど反映していない。新制度の下でも、
人民銀行はドル買い介入によって人民元相場の安定を図っており、人民元改革による経済的効果
は皆無に等しいとみられる。
夏休み明け後、米国の産業界や議会の対中圧力は、改革への失望感もあり、これまで以上に
強まる可能性がある。また、米国からの圧力が強まるにつれ、香港ドル高圧力が高まる事態も予
想される。中国政府は、2%切上げが経済に与える影響が軽微であることを確認した後、早けれ
ば年内にも第2弾の切上げに踏み切る可能性が高い。その後は、通貨バスケットとの連動性を強
めることによって、人民元相場の変動幅を拡大していくことになろう。
2.人民元が日本経済・産業界に与える影響~人民元高を前提とした対中戦略を
人民元が年内に合計5~7%程度切り上げられた場合でも、日本のマクロ経済へ与える影響
はさほど大きなものにはならない。また、米国の貿易赤字の削減にもほとんど寄与しないとみら
れる。
ただ、個別産業には様々なかたちで影響を及ぼす。最も恩恵を受けるのは輸出企業であり、
すべての業種において輸出拡大効果が期待される。中国進出企業では、海外からの調達比率が高
く、かつ輸出比率も高い鉄鋼、非鉄金属などに大きなメリットがある。一方、中国から日用雑貨・
衣料品などを輸入する企業にとってはマイナス面が大きい。
日本企業は、中長期的に人民元高基調が続くことを前提として、対中戦略を描いていく必要
がある。とりわけ、中国進出企業は中国を従来の生産・輸出基地としてきた方針を転換し、現地
生産・現地販売を主体とすべきである。輸入企業は、高付加価値製品の取扱いを拡大するととも
に、中国リスクを分散させるため、他のアジア諸国からの調達を徐々に増やしていく必要がある。
3.人民元と資産運用~中国株への理解を深めることが第一歩
今後も、人民元高基調が継続し、中国経済が比較的高い成長を遂げるとすれば、対中証券投
資には妙味がある。外貨建ての中国株投資や中国株に集中投資する投資信託が投資対象になるが、
投資を実行する際には中国証券市場の現状や中国株の特徴をよく理解するとともに、株式相場を
大きく左右する政策動向にも注意する必要がある。
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