[季刊 国際貿易と投資 /No.60]
Summer 2005青木 健(Takeshi Aoki) : 杏林大学総合政策学部 教授 ; (財) 国際貿易投資研究所 客員研究員
*Institute for International Trade and Investment ((財)国際貿易投資研究所 )
中国は1979 年の開放政策に転じ、1984 年以降2004 年まで20 年間連続
して9%以上という高い成長率を維持し、歴史的高揚期を迎えている。
高成長を維持し同時にそれを誘発しているのが貿易で、世界の輸出入に
おいて2004 年中国は日本を抜きともに世界第3 位を占めるに至った。こ
れは中国が「世界の工場」であるとともに「世界の一大消費市場」とい
う構造を構築したためである。
中国のプレゼンスは東アジア域内貿易でも高まっている。東アジア域
内輸入に占める中国の割合は2001 年以降日本を抜き第1位となり、2003
年には25.2%にまで上昇した。中国は中間財を中心に東アジアからの調
達を急増させ、他の域内諸国の対中輸出を誘発するという「磁場」の役
割を果している。並行して、中国は一次産品を世界中から調達している。
さらに中国は製品を世界中に輸出し、東アジア向け輸出シェアは低下の
一途をたどっている。こうした中国の対東アジア貿易関係の非対称的変
化は表裏一体である。その含意は中国が輸出でグローバルパワーになり
つつあるが、それを背後で支えているのが東アジアからの輸入であると
いうことである。
以下、中国の対外貿易構造変化を「集中」(輸入における東アジアのシ
ェアの上昇)と「分散」(輸出における東アジアのシェアの低下)の観点
から分析する。